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PR会社の中に研究所!?企業広報戦略研究所の実態に迫る!

Profile

執行役員 / 企業広報戦略研究所 所長

阪井 完二 (さかい かんじ)

1992年入社。企業ブランド・経営広報戦略のコンサルティングと実践を主に提供。IT/通信・電力・鉄道・デベロッパーなどインフラ事業、製薬、政党・政府・自治体、スポーツ団体など様々な業種におけるコンサルティングの実務経験をもとに、ビジョン開発や経営戦略発表会、トップマネジメントのメッセージ開発、メディアトレーニング、KPI分析などを多数実践。

ステークホルダーエンゲージメント局 コーポレートコミュニケーション部
企業広報戦略研究所 主任研究員

関口 響 (せきぐち ひびき)

2016年入社。入社以来プランニング&コンサルティング局(現:PRソリューション局)に所属。外資大手クレジットカード会社を始め、飲料、小売、自動車部品、ITベンチャーなど幅広い領域の企業の広報サポート業務に従事。現在はステークホルダーエンゲージメント局 コーポレートコミュニケーション部に所属し、調査を活用したPR、メディアヒアリング、レピュテーション分析、広報効果測定、報道論調分析や企業リスク/ソーシャルリスクなど、コーポレートの広報戦略やイシュー・リスクに関連したコンサルティングを主に担当。

企業広報戦略研究所とは

電通コンサルティング(以下電通PRC)内に設けられた研究組織。メンバーは電通PRCの社員の他、企業経営や広報の専門家である大学教授や研究者などで構成され、社外ともつながりが強い。

 

2013年の設立以降、「広報オクトパスモデル」や、「企業魅力度モデル」、「危機管理ペンタゴンモデル」などの開発を行い、企業や生活者を対象にした調査を実施。「戦略思考の広報マネジメント」(日経BPコンサルティング)をはじめとした書籍の出版も行う。

 

 

…と、言われても「研究所」って一体どんなことをやっているのか分かりづらいですよね。そこで今回は企業広報戦略研究所(Corporate communication Strategic studies Institute、以下CSI)の副所長を務める阪井完二コーポレートコミュニケーション戦略局局長と、若手研究員として活躍する関口響社員にインタビューしました!PR会社内の組織としては特殊な当研究所について、これを読んで少しでも理解してもらえればと思います。

 

 

企業の「広報力」を見えやすくする

阪井さんは2013年にCSIを立ち上げたメンバーの1人ですよね。まずはCSIが設立された目的から教えてください。

阪井

固く言えば「企業価値向上に資する広報の高度化」というのが研究所の目的ですが、それはPRに対する企業の期待が高まってきている、ということだと思います。

これは設立する数年前からすでに言われていたことですが、PRに求められるものは、近年、より経営レベルの課題に近づいてきています。そして、それは広報担当者にとって「なぜ広報をやらなければいけないのか?」を経営層に説明する必要性が高まっているということを意味します。

これまで我々はPR会社として50年以上仕事をしてきましたが、蓄積された「経験値」に頼っていた部分が大きかった。そこに新たにデータを加えることで、より説得力を持った提案をできるようにしたいと考えました。また、それが実現できれば、PR業界の発展にもつながると思っていました。

PR業界の発展と言いますと、具体的にはどういった意図があったのでしょうか。

阪井

業界のリーディングカンパニーである我々が培った経験を活かし、それを見えやすい形にするためにデータを作っていくというのが当初の目的でした。だからこそ、最初に取り組んだのが広報オクトパスモデルに基づく「企業広報力調査」です。企業が自社の広報力を他社と比較し見えやすくする仕組みを作ったのです。

誰が見ても理解できるフレームに落とし込む

CSIの広報力や魅力度に関する調査は、設立以前から行っていた自主調査とはどういった違いがあるのでしょうか。

阪井

生活者を対象にした調査は電通PRCとして以前から行ってきましたが、「企業」を対象にした調査はなかなかできないというのが現実でした。

このような調査研究は本来業界団体などが取り組むことが多い。しかし、日々企業の広報担当者と向き合っている我々であるからこそ組み込むことのできる知見もあると思い、CSIでは新たに企業を対象にした調査の実施に踏み切りました。

業務の中での知見というのは実際どのように活かされたのでしょうか。

阪井

例えば社内で企業広報を専門にしてきた人がある種のフレーム(考え方)を持っていたとしても、「あの人でなければうまく説明できない」といった部分がどうしてもありました。

そのフレームに、データを加えて、誰でも提案に活用できるように作り変えたものが、今世の中に出ている「広報オクトパスモデル」や「企業魅力度モデル」です。

モデルを作る上で最も苦労したのはどういった部分でしょうか。

阪井

一番難しかったのは軸を作るところですね。

どのように分析軸を立てることが最も論理的で、かつ分かりやすいかを多くの時間をかけて議論しました。もちろんそれを調査にどう落とし込むかという部分も大変でした。

広報の幅広い活動範囲を分かりやすく伝える

確かにこれまでの研究では、企業の広報力、魅力度、危機管理の評価のための軸がそれぞれ明示されています。例えば、広報オクトパスモデルでは8つの軸に分けて企業の広報活動を捉えていますね。
こういった軸を設けたことによって社内外からの評判に変化はありましたか。

阪井

変化は大いにありました。 「広報」という漠然としたものを8つの軸に分けたことによって、「『広報』ってこんな幅広い活動をしないといけないんだ」といった声を、企業の広報部門の方々からいただくようになりました。メディアリレーションに加えて、従業員や投資家・顧客など幅広いステークホルダー(※1)とのリレーションこそが、パブリックリレーション(広報)であるということをお伝えできたのではないかと考えます。

先日当研究所が開いたセミナーでも実際に広報担当者の方から、「(CSIの研究成果は)分かりやすい」「実務に役立つ」とのお言葉をいただきました。

※1. 企業と利害関係にあるか、企業の経営に影響力を持っている人のこと

調査に参加した企業にとっても恩恵は大きいということですね。

阪井

調査を通して、それぞれの企業は「取り組まなければならないこと」を把握できるようになったのだと思います。各社の広報担当者はこれまで自己流でいろいろなことをしてきましたが、それが業界平均と比べてどうなのかということを知る手段はありませんでした。

しかし、それはどの企業にとっても一番の関心事でした。 CSIが調査を実施したことによって、「多くの企業が実施しているから、自社も取り組むべきだ」ということを、データをもって言えるようになったのではないでしょうか。

「発信力のある研究所」という価値

関口さんは2018年7月に今の部署に異動してから、本格的にCSIの研究員として活動に参加するようになったそうですね。
実際に自分が研究に携わることで学びや発見はありましたか。

関口

CSIがPR会社の中にあることで大きな発信力を持つことができ、それが大きな強みにであることを、活動に参加する中で改めて知ることができました。

その背景には、私が研究員として調査結果のメディアプロモート(※2)を行い、それが実際に報道につながったという経験があります。それぞれのオウンドメディア(※3)で情報を発信している一般のシンクタンクに比べ、PR会社ならではのメディアリレーションを活かした発信の仕方ができるところに、研究所としてユニークな価値があると感じました。

※2. TV、新聞、雑誌やWEBなどのメディアに訪問や電話、メールなどで情報提供を行い掲載してもらえるように活動すること

※3. 自社の広報誌やWEBサイト、SNSアカウントなど、企業が自ら発信するために用いる媒体

「発信力」と言えば本も出版されていますよね。これらの研究成果はもともと書籍として発信する想定だったのでしょうか。

阪井

最初から本にしようと思っていたわけではありません。

もともとはWEBを通した発信を考えていましたが、効率的に発信する方法は何かと考えたときにたどり着いたのが「本」という形でした。最も伝統的なやり方でしたが、WEBだけにしていたら現代のあふれる情報の中で埋もれてしまっていたのではないかと思います。

米国で仕事をした際も、現地のシンクタンクの人から「本を出されていますよね」と言われました。日本語でしか出版していないので驚きましたが、本を出していること自体が研究機関として認められる要素にもなるということは発見でした。

やりがいは業界の指標づくりに携われること

関口さんはまだ若手ということで、苦労した部分もあったかと思いますが、研究員としてのやりがいはどういったところにありますか。

関口

やりがいは「業界の指標づくりに携われること」だと思います。

学生時代、私は英語のスピーチ競技に参加していました。その中で自分が感じたのは「客観的な評価基準」の重要性です。競技である以上、人に伝わりやすいスピーチ内容や表現の評価指標が設けられていたことが、自身のスピーチ技術向上に非常に役立ったんですね。

そうした「指標」の重要性は、企業活動にも同様に当てはまるのではないかと考えていました。例えば企業がより良い広報活動を行っていくために、他社と比較をしながら、自社の強みや弱みを明らかにできる指標が必要ではないかと。

それゆえ、第三者の立場から業界の指標作りにまさに取り組んでいたCSIには学生時代から興味を持っていました。そして今、その一翼を担えているということは素直にうれしく思います。

就活生へのメッセージ

最後に、これを読んでいる就職活動中の学生に対してお二人からメッセージをお願いします。

関口

電通PRCでCSIの活動に参加すれば、広報業界のルールメーカーの一翼を担うことができるのではないかと思います。そこに期待や、やる気のある方にはぜひ入ってきてほしいです!

阪井

すごいね…(笑)。

若い人に我々が期待するのはやっぱり探究心です。自分たちが普段疑問に思っていることを探求し、さらにそれを世の中に分かりやすく伝えていこうという気持ちを持っている人と、ぜひ一緒に働きたいですね。

CSIの理念と、その活動内容について少しでも理解していただけたでしょうか。
CSIが主に活動の領域とするコーポレートコミュニケーションは「企業」が主体となる分野なので学生の皆さんからすると想像しにくい部分が多いかもしれません。
しかし、PR活動の中で目指すものは一貫して社会とのより良いコミュニケーションの実現です。PRパーソンとして、企業とそれを取り巻く人々との関係作りに貢献したいという高い志を持った皆さんの入社をお待ちしています!

Writer’s Profile

統合コミュニケーション局 データストラテジー部/
企業広報戦略研究所 研究員

伊澤 征 (いざわ ゆき)

2018年入社。外資日用品メーカーやクレジットカード会社などの、調査を基点としたコンテンツ制作、報道論調分析、(SNSにおける)ソーシャルリスニング/アカウント運用に従事。大学時代は国際社会学を専攻し、バンド活動、在住外国人支援に向けたボランティア活動を行っていた。