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プロジェクトってどう進んでいくの?―SEIKO「時を休もう。」プロジェクト

SNSで話題になっているニュースや、街中にふと現れて人目を引くイベントやオブジェ。実はそれ、電通PRコンサルティングの仕事かもしれません。電通PRコンサルティングって具体的に何をしているの?どんな人たちが携わっているの?そんな疑問を、実際の事例をもとに3人の社員に聞いてみました。

Profile

PRソリューション局

高橋 洋平 (たかはし ようへい)

2009年入社。入社以来一貫して現部署にて主に企業の新商品・サービスの立ち上げからブランディングまで、幅広い領域で企業のPRコミュニケーションを支援。「価値ある情報づくり」の考えを起点に、広告も含めたPRコミュニケーションのプランニングを行っている。

統合コミュニケーション局 データストラテジー部 部長

酒井 繁 (さかい しげる)

2010年入社。入社後は主に企業広報領域におけるリサーチを核としたプランニング及びコンサルティングに従事。企業の広報戦略・体制等について調査・分析・研究を行う社内の研究組織「企業広報戦略研究所」主任研究員。

統合コミュニケーション局  ソリューションデザイン部 (テレビ担当)

今井 慎之助 (いまい しんのすけ)

2社のPR会社を経て、2014年より電通PR(現:電通PRコンサルティング)に入社。メディアリレーションズ、特にテレビを中心にPR業務を担当。消費財を扱うナショナルクライアントの他、大型スポーツ関連イベント、官公庁クライアント等幅広く担当。現在では、WEBや動画コンテンツからテレビへの露出などといった、新しい情報流通構造の構築にも従事。

プロジェクト概要

 

セイコーホールディングス「時計メーカーSEIKOが時計を“休止”!?2018年「時の記念日」プロジェクト」

 

 

毎年6月10日は「時の記念日」。2018年、この記念日に時計業界のリーディングカンパニーであるSEIKOは、銀座のシンボル、銀座・和光の時計を布で隠して「お休み」しました。「働き方改革・時間の効率化」が問われる現代において、もっと時間を自由に感じてより良い時間の過ごし方を考えてみるきっかけを提供したいというメッセージが込められています。この大胆な取り組みは、テレビニュースや新聞に取り上げられ、SNS上でも話題となりました。

 

https://www.seiko.co.jp/tmd/2018/

SEIKOらしい、そしてSEIKOにしかできないストーリーを、目に見える形で発信する

依頼のきっかけや、チーム結成の経緯を教えてください。

高橋洋平さん(以下:高橋)

もともと2017年に「時の記念日」に合わせたSEIKOの企業ブランディング施策についてのご相談が電通本社にあり、PRチームとして電通PRコンサルティングも参加しました。

 

2017年はご時世の「時間」の価値や気分を調査・考察し「時間白書」としてまとめて発表。それをもとにニュースとしてメディアに取り上げてもらいました。もともと18年以降も継続していくという方針を持って始まったことなのですが、18年の企画をよりよくしていくと考えた時に、SEIKOの「時間は、生きるうえでドキドキワクワクをくれるもの」という思いがもっと伝わる企画にしようと思い、情報を作って発信するだけでなく、人々の目に見えるようなアクションをとれないかと考えました。

 

また、時間や効率化をテーマにした他の企業の施策はたくさんありますから、ユニークネスも重要です。「SEIKOらしい、そしてSEIKOにしかできないストーリーを、目に見える形で発信する」という大方針で、企画の初期段階から電通本社と連携し動き出しました。データコンテンツ調査担当の酒井さん、テレビでの取り上げまでイメージし、テレビプロモートを専門とする今井さんに声を掛け、チームを作りました。

どんな流れで、どんな提案をしましたか?

高橋

企画提案に向け、まずは社内ブレストをしました。その中で「効率化の大きな波がきて、せわしない世の中になってきているご時世に、『時計』がなくなったら、インパクトの強い出来事になるよね」というアイデアのタネが出ました。皆が知っている時計といえば真っ先に銀座・和光の時計塔……。さすがにあのシンボルが消えるというのは現実性がないかもしれないけど、このアイデアを元にご提案してみよう、ということに。

 

結果としては、SEIKOの担当者の皆さんにこのストーリー・アクションに共感いただくことができ、企画を進めていくことになりました。簡単に「進めていく」と言いましたが、実際にはSEIKOにとっては大変な決定だったと思います。和光の時計は社の事業や歴史を象徴する存在で、さらに銀座のシンボルという意味では社会的財産でもある。それを2日にわたって隠すということは社内外で賛否含めさまざまな意見が出るような、ある種の“事件”的な出来事です。

 

それでも、SEIKOの思いをSEIKOらしく伝えられるならやろうと、SEIKOの皆さんが思い切った決断をしたからこそ、世の中に届く企画になったんだと思っています。

提案後、どのようにプロジェクトは進んでいったのでしょうか?

高橋

このアイデアに対してゴーの判断が出てからは、“時の記念日チーム”で3つの作業を進めました。

 

1つ目は時計を隠すことを物理的にどう実現させるか。2つ目は“せわしない世の中”を浮き彫りにする調査の仮説検証。そして3つ目は、メッセージを伝えるクリエーティブの検討です。クライアント社内での確認や電通ライブチームでの施工方法の検討などが進み、企画実現性が確認できた4月ごろから、具体的な調査内容の検討を酒井さん、今井さんらと進めつつ、並行してコピーやアートディレクションを電通のクリエーティブチームに相談し始めました。

 

調査の内容検討に当たっては、「働き方改革」などの影響を含めて、時間を管理しなくてはいけないという感覚が強くなっている=「時間に縛られている人」が多いのではないかという仮説を立て、それをひもとくように調査を設計しました。実際、それを裏付けるような結果が出たわけですね。

メディアが取り上げたくなるような“PRストーリー”と共に “事実(=ファクト)”を作り、それをコンテンツとして情報発信する

まず、PRにおける「調査」とはどういうことをするのでしょうか?

酒井 繁さん(以下:酒井)

PR業界における“調査”は、いわゆるマーケティング領域の「市場調査」というより、「データコンテンツ調査」と呼ばれるものが多いです。生活者の考えや意見を、調査という手段を通じて明らかにし、メディアが取り上げたくなるような“PRストーリー”と共に “事実(=ファクト)”を作り、それをコンテンツとして情報発信する。そしてメディア露出を通じて世の中に影響を与えるといったものです。

 

今回は、最終的に「(時に関する)人々の捉え方の変化」に関するニュースを創り出すことを目標に、裏付けとなるような“事実”を調査結果から導き出すことが必要でした。

どのような“PRストーリー”であればニュースとして成立し、メディアが取り上げてくれるのか。これは電通PRコンサルティングの長年の知見があってこそ生み出せるものだと思います。

なるほど、今回のSEIKOさんのプロジェクトにおいては具体的にどのような調査が行われたのでしょうか?

酒井

実は昨年も「時の記念日」に合わせて「人の時間への感覚」について調査を行ったんですね。でも「時間の感覚」ってすぐに変わるものではないので、今回同様の調査を行っても新しい発見を導き出すのは難しく、ニュースに取り上げてもらえるような発見は得られないと。なので、調査を入り口として「時を休もう」というアウトプットを出口としながら、昨年からの定点に追加して新たな「時間の認識」に関するインサイトを明らかにする項目を追加しました。

 

例えば、昨今のニュースで常に話題となる「働き方改革」といった社会潮流とのひも付けでニュースを作るという考え方の下「今の人々は時間に追われ、休みの日さえも気持ちは休めていないんじゃないか、何曜日の何時がこの現代で重要視されているのか」という世の中が気付いていない事実をあぶり出そうと調査票を作成・設計し、生活者1200人に対して調査を実施しました。この裏付けがPRストーリーの支えとなり、メディアに取り上げてもらう際の説得力のあるファクトになりました。

こうして説得力のあるファクトが出来上がったのですね!次に、メディア・SNSで取り上げられるためのプロセスを教えてください。

今井 慎之助さん(以下:今井)

僕は「時計を隠す」というアイデアが決まってからチームに参加しました。「世間でまだあまり知られていない『時の記念日』という事実をどう伝えるか」、「世の中に注目されるにはどんな“画”を作るべきか(テレビ映えする映像の切り口、内容)」という2つの軸で考えて、設計に携わりました。

 

結果的に週末の複数の情報番組でこの施策を取り上げてもらうことに成功しました。 週末のニュース番組は、社会性や時事性のあるニュースを取り扱う傾向が強い。だから「時の記念日」と今回の企画がどうすれば社会ニュース切り口で放送してもらえるか、という部分で工夫が求められましたね。TV映像で取り上げてもらうときの流れをイメージして、「今日は時の記念日~」という“世の中ごと”の入り口から、「時計を隠す」という施策の “画”、そして調査結果で導き出した「多くの人々が最も大事にしている時間は金曜の22時」といった視聴者に納得感や驚きを感じさせる“事実(ファクト)”を絡め、働き方改革文脈の社会ニュースにしようと。放送された映像では、狙っていた流れで取り上げてもらうことができました。

 

SEIKOさんの名前とともに、隠された和光の時計塔という“画”がキャッチーに報じられるものが多かったですね。どんな画を作るかも大事だったけど、番組の担当者に、なぜニュースとして取り上げるのかを納得してもらう上でも、調査による“事実(ファクト)”はとても重要でした。このファクトがなかったら、ニュースにはならなかったかもしれないですね。

電通PRコンサルティングならではの強みとは?

上流のコンテンツ設計から、最終的なアウトプットまで担うことができるのが強み
酒井

メディア側の視点を把握している人、専門的な調査を実施できる人、さまざまな能力が集まってコンテンツが設計できること。そしてアウトプットとしてメディア露出までつなげられる点ですね。アウトプット部分だけに軸足を置いているのではなく、そもそもどのようなPRストーリーに基づいて、どのようなコンテンツであれば、メディア露出・拡散を通じて人々により広く伝えていくことができるか、と戦略的に設計することができるのは電通PRコンサルティングならではですね。

各々の強みが1つの仕事の中で混ざり合う
今井

1つの案件でも今回のように全く視点の違う3人が、それぞれの立場の強みや専門知識を社内で持ち寄れるところが面白いかも。例えると「既に完成している家をPRする」っていうアウトプットの部分だけに携わるんじゃなくて「何階建てにするか、どんな車庫を作るか」というそもそもの家の建て方の段階から各役割の視点・領域で関わっていける、みたいな。しかも良い家を作るために足りないデザイナー役や大工役が出てきたら、そういった人たちも社内でそろえられるのは強みだと思いますね。

この仕事のやりがいとは

クライアントを通じて社会に貢献
高橋

企業の事業、あるいは思想や発言は社会に大きな影響を与えるものだと思います。PRという見方・やり方は、それを「価値ある情報」に変えることで、影響をより大きなものにできるものだと思うので、そういう意味で社会に貢献できるところがやりがいですね。

生活者に寄り添う事実を伝える
酒井

「こうあればいいな、こう伝えたいな」というPRのアイデアベースの部分を、データを使って論理的にひもといていきながら、「本当に生活者に響くものなのか」と生活者に寄り添って考える。そして調査のデータが、PRストーリーを裏付ける一部となる。生活者に寄り添う事実を伝える使命を負っているというのは、大きなやりがいとなっています。

誰かに伝えたくなるコンテンツを創り出す仕事
今井

テレビプロモートという点に特化して話すと、自分の家族や友人が「あれ、知ってる?」と話してきた話題が自分の携わった仕事だと、しめしめって思いますね(笑)。思わず人に話したくなるようなモノ・コトを生み出す現場に関わる仕事ができるのは、この仕事の面白いところです。

いかがでしたでしょうか?さまざまな役割のプロフェッショナルが社内に集結しているのは、電通PRコンサルティングの大きな強みです。 今回はプランニング&コンサルティング、調査、TVの部署から編成されたチームをご紹介しましたが、クライアントのご依頼・課題に合わせて、チームメンバーは柔軟に変わっていきます。 雑誌やWEB・ソーシャルメディアの専門部署もあれば、グローバル案件を中心に行う部署、コーポレートコミュニケーション、リスク/クライシス広報の部署など、“役割”は多岐にわたります。 日常でふと出会ったニュース、誰かに話したくなるようなイベント、お気に入りの商品やサービス、ブランド。皆さんが身近に感じているさまざまなモノ・コトの裏側に、私たち電通PRコンサルティングが考えた仕掛けだったり、アイデアが隠されていたりするかもしれません。ぜひ一緒に、そうした施策を考える側になって、日本中ひいては世界中で話題になるような仕事を創ってみませんか?

Writer’s Profile

ステークホルダーエンゲージメント局 コーポレートコミュニケーション部
企業広報戦略研究所 主任研究員

関口 響 (せきぐち ひびき)

2016年入社。入社以来プランニング&コンサルティング局(現:PRソリューション局)に所属。外資大手クレジットカード会社を始め、飲料、小売、自動車部品、ITベンチャーなど幅広い領域の企業の広報サポート業務に従事。現在はステークホルダーエンゲージメント局 コーポレートコミュニケーション部に所属し、調査を活用したPR、メディアヒアリング、レピュテーション分析、広報効果測定、報道論調分析や企業リスク/ソーシャルリスクなど、コーポレートの広報戦略やイシュー・リスクに関連したコンサルティングを主に担当。