SCROLL
GALLERY

若手が世界に羽ばたくチャンス!日本代表となったPRパーソンが語る“ヤングカンヌ”GOLD受賞までの舞台裏

広告・PR業界の若手の登竜門である「ヤングカンヌ」で日本1位に輝いた社員にインタビュー

この記事を読んでいただいている学生の皆さんの中には、単に広告・PR業界に興味を持っているだけでなく、「将来国内外のアワードで受賞をしたい!」と目標に掲げている方もいらっしゃると思います。当社も毎年国内外のさまざまなアワードにエントリーし、複数受賞しています。

そんな中、2021年度のヤングライオンズコンペティション(通称:ヤングカンヌ)のPR部門に挑戦し、国内予選で見事日本1位のGOLDを受賞した佐藤社員と森光社員にインタビュー!GOLD受賞を成し遂げた企画制作の裏側や、企画作りのコツ、誰でもできるアイデアの訓練、学生時代のことまでたくさん伺いました!

※2021年時点の所属・情報です
 

Profile

プランニング&コンサルティング局

佐藤 佑紀 (サトウ ユウキ)

2014年入社。以来、多岐にわたるクライアントのPR施策企画立案・実施に携わる。2018年にプランニングを手掛けた地方創生のプロジェクトは、国際PR協会主催の業界賞「ゴールデン・ワールド・アワーズ・フォー・エクセレンス」において、世界中から集まった400を超える応募の中から最高賞となるグランプリを受賞。2019年1月より2年間、電通に出向。帰任後は、プランニング専門部署から生まれたチーム「PRX Studio Q」の一員として、クライアントの課題解決に取り組んでいる。

コーポレートコミュニケーション戦略局 サステナブル・トランスフォーメーションセンター

森光 菜子 (モリミツ ナコ)

2017年入社。TVを中心としたメディアコンサル業務を行った後、2019年より(一社)パラスポーツ推進ネットワークに出向し、D&I(=ダイバーシティ&インクルージョン)文脈におけるコミュニケーションを競技団体向けにサポート。PRSJ 主催PRアワードグランプリ2021でGOLDを受賞した「パラスポーツの普及を通して社会を変革する PaRa Transformation(PX)」プロジェクトメンバー。
「PRX Studio Q」、電通グループ横断ユニット「GIRL’S GOOD LAB」所属。

■ヤングライオンズコンペティション(通称:ヤングカンヌ)とは?

世界にある数々の広告・コミュニケーション関連のアワードやフェスティバルの中でも、エントリー数・来場者数ともに最大規模を誇る「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル(Cannes Lions International Festival of Creativity)」。その30歳以下の部門のコンペ形式のプログラムを「ヤングカンヌ」といい、コミュニケーション業界における若手の登竜門とされています。

 

「ヤングカンヌ」の詳細についてはこちらの記事でも詳しく書かれているので、併せて読んでみてください。

世界一のPRパーソンになれるチャンス?!“ヤングカンヌ”って何?

■「甲子園みたいで楽しそうだった」

Q.なぜヤングカンヌにエントリーしようと思ったのですか?お二人がペアになった理由も教えてください。

佐藤佑紀(以下:佐藤)

先輩社員を見て楽しそうだなと思ったのがきっかけですね。新入社員の時に「こんな大会があるんだ」と初めて知ったのですが、年の近い先輩方が挑戦していて、負けた時にすごく悔しそうだったんですよね。それを見て「甲子園みたいな雰囲気ですごく楽しそうだな」と思って参加し始めました。

最近は学生時代にビジネスコンペを頑張っている学生さんが多くて、電通PRコンサルティングに興味を持ってくれる人はそういう人も多いと想像しています。ただ僕自身は、こういうコンペみたいなものと無縁の学生時代を送っていて、入社してから初めて知ったのが、本当のところです。

 

森光菜子(以下:森光)

私も大学の頃はコンペに触れる機会が無くて、会社に入ってから社内勉強会でヤングカンヌの存在を知って、参加したという経緯です。毎年出場しているのでこれまでに合計4回出場しています。

佐藤さんとは、私からプロポーズしてペアになりました(笑)。ある仕事をきっかけに、佐藤さんがいろんな仕事に誘ってくれるようになって、そこからPRの話をするようになりました。仲はもちろん良いですが、仕事の面ですごくリスペクトしている方だったのでお誘いしました。佐藤さんとは今回で2回目の出場になります。

佐藤

前回(2019年)ペアになった時は受賞できなかったので、「借りを返そうぜ!」って感じで、自然な流れでした。

■応募数最多のPR部門でGOLD受賞

ーぶっちゃけ、GOLD受賞ってどのくらいすごいのでしょうか?

森光

ヤングカンヌ国内予選はPR界のM-1みたいな感じで、それの1番ですかね。でも芸人さんの方が長きにわたり苦労されているのでやっぱりナシでお願いします・・・(笑)

佐藤

PRはコミュニケーションの思考法なので、応募自体には特定の技術が必要なく、極論、どんな人でも出られる部門と言えるかもしれません。フィルム部門は映像を撮る技術のある人ではないと応募自体にはハードルがありますし、他の部門もある種の専門性が必要になっています。PR部門は応募数も幾つもの部門の中で最多の100組以上です。そういった中で、PRパーソンとしての専門性を発揮して、GOLDを取れたのは誇らしいことだと感じました。

森光

国内の最終審査で、英語プレゼンがない他部門もあります。企画書を1枚提出したら、そこから審査が進んでいくそうです。ただ、その中でPR部門は企画書が最大スライド10枚。ある程度のボリュームを求められています。それに加え、全て英語で実際のプレゼンをするというスキルも求められるので、他の部門の受賞者からは、「PR部門でGOLDなの?!めちゃくちゃすごいね」と言われてうれしかったです。

佐藤

ちなみに、エントリーの順番No.1、プレゼンの順番No.1、コンペの結果No.1というトリプルNo.1受賞でもありました!

 

■ヤングカンヌPR部門でGOLDを受賞した企画とは

ー2021年度はどんな課題が出されましたか?過去の傾向も踏まえて教えてください。

森光

「先進国で孤独を抱えて暮らす人々の問題を解決するためのグローバルキャンペーンを企画せよ」というのが今年のお題でして、ターゲットは先進国の一般市民、想定クライアントは「Global Loneliness Prevention Alliance」という孤独の問題を解決するために設立された架空の団体でした。

佐藤

基本的にはその年に注目を集めた社会的なテーマがお題になることが多いです。森光さんと前回挑戦した2年前の2019年度(2020年度はコロナ禍のため中止)は、ちょうど#MeToo運動とかがすごく盛んになっていた時期だったので、「女性と男性の格差を是正するグローバルアイデア」というのが課題でした。

森光

2021年度はやはりコロナ禍で孤独な人が増えたことからこのような課題になったんだと思います。ちなみに、PR以外の他部門も共通のテーマなので、それぞれ切り口が違う解決法を見ることができ、それも参加していて面白い点だなと思います。

 

ーGOLDを受賞した企画について教えてください。

森光

グローバル家具メーカーとコラボして、通常一つの家具に対して1種類しか同封されていないはずの組み立て説明書を2種類作るという企画を考えました。2種類の内訳は、A:1人(=孤独な人)用の組み立て説明書、B:2人以上(=孤独に悩んでいない人)用の組み立て説明書です。

私たちは始めに、孤独に関連する問題はなぜ起こるのかを考えました。そこで気付いたのが、「孤独」という問題に対して、世の中には大きく二つのグループがあるということです。その二つとは、①孤独に悩んでいる人々、孤独だがそれに気付いていない人々、②孤独な人を助けてあげたいが手段が分かっていない人々、孤独な人がいることにそもそも気付いていない人々です。この二つのグループが抱えるインサイトがすれ違っていることが、孤独が解消されない問題であり、これらのグループに対して同時にコミュニケーションを行うことで問題解決のきっかけになると思いました。

佐藤

そして、「孤独と関連が深そうなタイミングって何だろう?」と考えたときに“引越し”が出てきました。引越しに関連深いテーマを探すと、家具は絶対買いますよね。そこで、「家具を買うときに何か自然に気付きを与えられるタイミングはないかな」と考えた結果、「そういえば、“この家具は2人以上で組み立ててください”って説明書に書いてあるのって、あるあるだけど、すごく違和感があるよね」となりました。

森光

私たちが大事にしていたことは、孤独を抱えている人たちだけでなく、孤独を助けてあげる側の人たちにも、孤独に関する問題があることに気付きを与えるということでした。そこで家具の組み立て説明書を活用すれば、そのグループにもコミュニケーションができるのではないかと思い、2種類の説明書を作ったんです。

2種類の説明書の表紙には、①「*NDIY MANUAL For assembling alone (*Not Do It Yourself/自分だけでしないで)」、②「*DIY MANUAL For assembling 2 or more(Do It Yourself/自分たちでする)」と記載。①の孤独な人用の説明書を読み進めていくと、Global Loneliness Prevention Allianceからのメッセージとして「全てのことを自分だけでやらなくて良いんです。私たちはあなたをサポートする準備ができています。何に困っているかをご連絡ください」と書いてあります。②の説明書には、「あなたが組み立てているこの家具を、孤独問題により組み立てられない人がいます。私たちのファミリーになって、アクションを起こしませんか?」というメッセージを記載しました。そして二つのグループが実際に関係構築できるパーティーへの招待状も添付。これらの活動により、孤独な人が存在することや自身が孤独であることに気付きを与えられるだけでなく、リアルなコミュニティーをつくることで孤独関連の問題の解決につなげることができます。

 

 

―企画を立てるときに、意識したポイント、注意した点はありますか。

森光

企画が“三方よし”の関係になっているかというのは意識していました。というのも、このGlobal Loneliness Prevention Allianceがこの企画をやるのは、孤独な人を救うという意義あることです。ただその一方で、参画してもらう家具メーカーにもメリットがないと、打ち上げ花火的な一回きりのPRに終わってしまうので、持続可能性はすごく考えました。

佐藤

他には、押しつけがましい、説教じみたメッセージングをしないようにしようと話していました。ここはPRパーソンの腕の見せどころだと思います。プレゼンをした後に審査員の方からも、人々が孤独に気付く接点が違和感なく生活の中に組み込まれているので、「シンプルですてきですね」と評価をしていただきました。

実際、「この家具は2人以上で組み立ててください」という“あるある”の文言を「この世には孤独な人が安全に組み立てられない家具が存在している」と自分の中で言い換えられたとき、「これは良い企画になるな」となりましたね(笑)

■英語力は必要だけど、まずは挑戦してみよう!

―企画制作を進める上で特に苦労した点はありますか。

森光

最終プレゼンでの質疑応答対策ですかね。

佐藤

アイデアをまとめ上げ、資料作成まではスムーズにできたけど、それを見返しあらゆる穴をつぶしていくのが質疑応答対策です。「そもそもこれで本当に孤独って解決できるんですか」みたいな本質的なところから細かい違和感まで森光さんと詰めて対策しました。

森光

でも想定質問をかなり詰めたので、当日は1問を除き全て準備していた回答でした。練習の成果が出ました!

―どのくらい英語力は必要ですか?

森光

英語力は絶対あった方が良いです。ただ、ペラペラに話せなくても諦める必要はないと思います。

佐藤

質疑応答は全部英語、かつ時間が5分以内なので、その場で簡単に返せるくらいのレベルは必要かなと思います。ただ、準備をしっかりすることでカバーできる部分はあるので、森光さんが言うとおり、そこが心配で挑戦を諦めることはしなくても良いと思います!

森光

ちなみに、社内の英会話コミュニティーがあって、私はそれに毎週参加していました。そのコミュニティーには英語をネーティブレベルで話す社員もいるのでとても勉強になりました。今回のプレゼンも事前に聞いていただいて、英語の表現などをチェックしてもらいました!

■アイデアは知識の集積とつなぎ合わせ

―今回の企画に日々の業務で生きたことはありますか。

佐藤

普段の業務から、「世界が100人の村だったら」を頭の中につくるようにしていて、「このメッセージをこの人が見たらどう思うか」というのをすごく気にするようにしています。昨今は、企業のメッセージが炎上してしまう事例が多いと思うんですが、そうならないようにいろんな人の気持ちを理解してあげるというのがPRの基本だと思っています。そういう感覚は、PRの実務においても、コンペにおいても、とても大切なことだと思っています。

あとは、日頃、たくさんの打ち合わせに参加して、アイデアの出し合いをするのが、今回のアイデアにつながったと思うので、日々の仕事の積み重ねがアイデアを出す“筋肉“になっていたんじゃないかなと、振り返ってみると思いますね。

森光

やはりアイデアは突拍子もなくいきなり降り注いでくるというよりは、普段の知識の集積とつなぎ合わせでしかないと思うんです。なので、パッと目に入って何か気になった広告とか、それこそ道路標識の「何であの矢印はこの長さなんだろう」とか(笑)ささいなことから、何で面白いのかということを私は都度ノートにメモるようにしています。面白いと思った理由と、同じようなフレームで横展開をするならば・・・といった具合に。そういう積み重ねが、普段の企画会議とかに出ても、「このときのこの考え方、使えるかも」につながると信じています。学生の方も簡単にまねできるので試してみてください。

■どんな経験もPRに生きる

ー学生時代の経験で今回の企画に生かされたことはありますか。

森光

最近「PRって楽しいな、天職だな」と思うんです。それは、どんな知識でも生きるからです。先ほどお伝えしたメモのように、全ての知識、全ての「なぜ」、全ての「なるほど」が思いもよらぬところで業務にひもづいていきます。なので、学生の頃からいろいろなことにかなりいろいろと興味を持っていたことはすごく役に立ったなと思います。

 

佐藤

僕は、大学時代はゼミに打ち込んでいました。研究しかしていなかったです。ゼミではメディアの社会的効果研究をしていたのですが、中でも「報道やSNSが人々の差別意識に与える影響」などを研究していました。当社に入社したのも「手法が問われないPRの力があれば、こういった社会貢献のかたちもあるんじゃないか」と思ったのが理由の一つです。ゼミでの研究に打ち込んでいて、特定の業界に入るために何かやっていたというよりは、自分の芯になるものを見つけて熱中していた感じでした。森光さんが言うように、あらゆる経験がPRパーソンにとっては武器になると思うので、何か一つでも熱中できたものがある人はすごくいいPRパーソンになれるんじゃないかなと思います。

 

■電通PRコンサルティングでは何でもできる

―今後の目標や挑戦したい領域はありますか。

佐藤

今回の「孤独」というのは結構得意な領域で、多くの人が「それって当たり前だよね」と思っていたことに問題提起をするようなことがずっとしたいと思っていました。何か気付きを与えられるような仕事をしたいですね。

今後の目標としては、まずはヤングカンヌの本戦で結果を残したいです。僕の場合は今回がヤングカンヌのラストイヤーなのですが、20代で築いた基礎をしっかり30代で飛躍させたいと思います。

 

森光

私は、D&I・クリエイティブ・PR、このそれぞれの点を一つに線でつなげていきたいと思っています。直近の3年間で、パラスポーツ関連の社団法人に出向していて、ずっとパラスポーツ選手や競技そのもののPRをやっていました。そこで感じたのが、やはりクリエイティブの力はすごく大事だなということです。クリエイティブもPRもD&Iも、要はその人・企業らしさを追求して、それを形にする作業だと思います。そして私はその三つ全部が好きなので、今後はどうにかして点を線にしたいとたくらんでいます。

■コロナ禍という逆境ですら武器になる

―最後にこの記事を読んでいる就活生の皆さんへメッセージをお願いします。

佐藤

PRという領域においては、「自分の価値や個性」というものがすごく武器になります。どうしても就職活動だと「隣の芝生は青い」し、周りの人がすごく優秀に見えたりします。特に最近は、コロナ禍で「学生時代に何に力を入れられたんだろう?」と思う人も多いと聞きました。でも、コロナ禍で制約の多い中で生きる経験を学生のときにした人たちって今の就活生しかいないんです。そういう人たちの気持ちが肌で理解できるというのは、それですらも武器になると思うので、いま自分たちの置かれた立場で一生懸命にやっていることをそのまま続けることが大事だと思います。

森光

佐藤さんの言葉が素晴らしすぎるので、以下同文とさせてください(笑)

 

Writer’s Profile

プランニング&コンサルティング局

生井 達也 (イクイ タツヤ)

2019年入社。コーポレートコミュニケーションの観点から、企業のブランド価値向上に向けた広報戦略立案としてのPR業務に従事。広報戦略コンサルティング、報道論調分析、ソーシャルリスニング、SDGs戦略立案等を担当。

情報流通デザイン局 ソリューションデザイン部

浅井 佑太 (アサイ ユウタ)

2021年入社。メディアの観点から、新聞・雑誌・WEBメディアにおける情報流通設計業務に従事。家電メーカーや飲料メーカーを中心に、SNS投稿立案や広報戦略立案を担当。